Analyzing ZC3230 Grazing at Oct.31 2006
2006.11.19 初稿
Limovie 0.9.25の新機能"Diffraction Fitting"を使って、現象時刻を求めてみました。
最新版(リリース候補)をこちらからダウンロードできます。Limovie 0.9.25rc5
1.観測
【現 象】ZC3236のグレージング
【日 時】2006年10月31日 21:24 - 21:35 (JST)
【観測地】上田市丸子三角 北緯 36o20'20.0" 東経 138o15'57.8" (世界測地系)
# 松井聡氏・上田高校天文班の観測に加えていただきました。
2.方法
(1) Limovieの測光機能で測定
○極軸設定が不十分で星像が僅かに動いたため、スタートラッキングモードは"Drift"とし、"Passed Point"を設定して良好な追尾結果を得ました。
○バックグラウンドの形状は、"Meteor/Lunar Limb"を用い、二つの半円形のバックグラウンド領域をそれぞれSKYと月面に置くようにしました。
○アパチャーの径を小さくし、S/N比を向上させました。
(2) グラフ表示
(3) 回折シミュレーションとの比較(Diffraction Fitting)
○回折の計算に必要な数値は、次のように求めました
・Lunar Distance: 369019km (星食予報ソフトウエア LOW より)
・LUNAR VELOCITY: 1.621 DEG. OF POSITION ANGLE/MIN. (IOTA 予報より)
これは、月縁の1周を360度としたとき、1分間に月が何度動くか、を表しています。そこで、この数値を VPAと表すと
月の影の速度(m/sec) = 月の半径(m) * π * VPA / (180 * 60) で求められます。
月の半径は1738000mですから、この星食の場合は、上式から 820m/sec と求められました。
# この方法は、せんだい宇宙館の早水勉氏からご教示いただきました。
※ Limovieは、Grazingモードの場合、単に時間を求めるだけであれば、これらの数値を必要としません。これらの数値を入力することにより、月縁と月の進行方向のなす角(接触角)を求めることができます。
○for Grazing ラジオボタンをONにしました。
○現象付近の数点についてFittingをおこない、測定値とシミュレーションの差の小さい測定結果を現象時刻としました。
3.結果
Event | Frame | KIWI OSD | Offset | Event Time | ContactAngle | Error | Least Squares |
1 D | 351 | 12h27m01.206 | - 81msec -> | 12h27m01.125s | 67.7o | 0.007s | 2302349 |
2 R | 3582 | 12h28m49.016 | + 56msec -> | 12h28m49.072s | 63.3o | 0.006s | 2735436 |
3 D | 3905 | 12h28m59.794 | - 68msec -> | 12h28m59.726s | 71.8o | 0.009s | 3153695 |
4 R | 6261 | 12h30m18.408 | + 60msec -> | 12h30m18.468s | 73.9o | 0.010s | 3050878 |
CA: Contact Angle of Lunar Limb (Measured by Diffraction Fitting)
Err: 3 sigma
Limovieは(赤く)選択されたフレームの中央時刻からの差(Offset)として現象時刻を示します。
誤差は、測定値と理論値(回折)の差から計算されています。これまで慣例的に用いられている値と大きく異ならないようにするために、3σとしています。
測定時刻±3σの区間に、真の値が存在する確率が99.7%ということになります。
4.Limovieによる処理のスナップショット
以下に、それぞれの測定のようすを示します。
月の明部が近く、視野が明るくなったため、バックグラウンド部がかさ上げされて、星像の一部がサチレーションを起こしているフレームもできてしまいました。
そのため、Diffraction Fittingを行うのに適当ではないのですが、幸い(?)増減光の変化が速い現象であったため、時間誤差が大きくならないことから、そのまま報告することにしました。