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微光天体の星食へのLimovieの応用

Oct.13 2002 XZ27317の掩蔽

XZ27317の星像。キャプチャした画面を2倍に拡大してある。点線に内接する、ぼんやり光る部分が星像。



星像が淡くノイズの多い画像(S/N比の低い画像)について、Limovieのテストを兼ねて測定してみました。2002年10月13日のXZ27317です。
当時、VixenのB05というビデオカメラを使っていました。現在のWAT100Nと比べて感度が低く、光量を稼ぐために25cmシュミカセを使用しましたが、(レデューサを用いていない状態では)9.55等というこの星がほぼ限界でした。
観測後、ビデオ画像を何回も見直しましたが、通常速の再生では星像が認識できるものの、コマ送りになるとどのフレームで消えたのかはっきりしません。焦点距離が長いために、星像が大きくぼやけていてノイズとの区別がつきにくいことに加えて、頼れるものは星像だけですから、それが消えたフレームはどこか、という判断をくだすことが難しいのです。結局当時は、画面での時刻判定をすることができず、「はっきりしない」というコメントをラベルに書き込んだビデオテープを、棚の中にしまいこんだままになっていました。
それから3年あまり経ち、最近になってLimovieというソフトをつくってみました。それでも、「画面上でよく見えないような現象は、光量測定ソフトにかけたところでやはりはっきりしないのでは。」と思い、すぐには測定の対象にはしませんでした。ところが、せんだい宇宙館の早水勉氏は、微光の対象星が多い「小惑星の恒星食」に対してLimovieを活用し、性能評価をされています。その中には10等級の恒星も含まれており、ノイズの中から現象のようすを明確に抽出することにも成功しています。今後もLimovieは微光天体のビデオの解析に対しても使用されることが多くなると考えられます。そこで、ノイズが多く星像の微かな場合の現象時刻決定の方法について検討するため、このXZ27317の測定をおこないました。
結果、Limovieの光量測定のグラフを参考にし、画面を1フレームずつ見て星像について調べることにより、現象時刻についてのデータを得ることができました。



上の左側の画像は、画面の星像が写っている部分(原寸大切り出し)です。画面を明るくすると、矢印の先付近に、微かに星像が写っているのを見ることができます。シンチレーションが大きいため、ぼんやりと広がっています。また、各画像の右上の色の印は、グラフ上の色の点に対応しています。
グラフはLimovieによる測定結果です。上がスタートラッキング機能を半径12でかけたもの。下がスタートラッキング機能をOFFにして測定したものです。


測定と時刻決定の実際


(1) まず最初に、ビデオの画面でおよその現象時刻を見て、その前後(約17秒)をキャプチャーした。
(2) その画像ファイルを用いて、Limovieで測定をおこなった。    

(3) StarTracking ON による測定(上のグラフ)では、OFFによる測定(下のグラフ)に比べて、星像の変化のようすをより正しく表現できているように見える。
(4) グラフより、現象(暗縁潜入)が10:48:08.000(UT) からの数フレームで起こっていることがわかる。

(5) この数値データをもとに、該当のフレームについて、Limovieの画面で1フレームずつ、詳しく見なおした。

(6) 誤差については、8.20()を中心に、明らかに星像と考えられるまで2フレーム、明らかに背景の空と思われるのいちばん低い値のものまで3フレームの「幅」がある。


観測結果

Observer:Kazuhisa.Miyashita
Telescope:25.0cm Schmidt-Cassegrain
Station
Station:Tenpyonomori,Akashina-machi,Nagano Pref.,JAPAN
Longitude137o56'55.73"E
Latitude36o19'45.05"N
altitude901m (T.D.)
Star
Star:XZ27317
Mag: 9.55
RA:19h38m59.3613s
Dec:-25o34'03.148"
WA:47.47o-
Observation
Dayd m y
13-10-2002
Time h m s
10:48:08.200(UT) +-0.10s


まとめ


Limovieによる測定結果(光度グラフ)は、微光星やノイズが多いビデオ記録から現象時刻を判定するための判断材料の一つとして活用することができる、と考えられる。
微光天体の観測画像では、星像とノイズの区別がつきにくく、星像が消失したフレームを特定することが難しいことが多い。そのような画像についてLimovieの光量測定結果の光度変化をグラフから読み取ることにより、星像が認められる期間と星像が消失した期間の境界部分のフレーム範囲を明らかにする。その上で、画像を詳細に観察し、星像が見られなくなった時を現象時刻とする。この方法によれば、現象時刻決定をより効率的におこなうことができる。また、現象(時刻)の「確からしさ」を、光量の変化をもとに、より客観的に示すことができる。
ただし、この例からわかるように、星像の値範囲が背景の値範囲と重なる場合には、グラフの変化のみで時刻を判定することには問題がある。CCDはその特性上、「残像」を考慮に入れる必要がない。光量の振幅は主としてシンチレーションによる星像の乱れとCCDのノイズからもたらされているものである。Apertureとして設定された範囲の光量データが、星像によるのか、ノイズによるのかは、数値やグラフからは判断することができない。たとえば、Aperture内にノイズの光点が多ければ、値は大きくなるであろう。先にも記したように、グラフを参考にしながらも、画像を目でたしかめることで、より確実な(と思われる)現象時刻を推定することができる。