重星SAO109530(XZ1197)の解析

2007/11/25

Table 1. Analyzing SAO109530 occultation using Linked Tracking function of Limovie.

１．はじめに

滋賀県の石田正行氏は、2007/11/21のSAO109530の星食のデータおよびビデオファイルを提供してくださった。ビデオより解析された現象時刻と重星の等級は以下のようである。

現象時刻　　伴星 0h13m27.03s　+/- 0.02s; 主星 0h13m30.49s +/-0.02s.

等級　主星を8.20等級と仮定すると、伴星は9.18等級

Table 1. Predicton by OCCULT 4.0

２．現象時刻

回折シミュレーションとして、月までの距離 (D)は、LOW(Lunar Occultatin Workbench) Ver4の予報による 358440kmを用いた。 また、月の影の速度は、OCCULT Ver.4　より得た RV(relatice velocity) 0.479 arcsec/second と コンタクトアングル(cct) -6°、上記の月までの距離(D)を用いて、次式より、837m/sec　を得た。

Vs=RV*D/cos(cct) .

比較に用いられた回折シミュレーションの値は、瞬間の値との比較となっており、1フレームの露光で蓄積されることを考慮していない。そのため、数フレームの時間内に起こる現象については、フィッティングに多少の誤差が出ていると考えられる。しかし、誤差はあまり大きくない（多分10ms 程度）と考えられる。

これより、Figure 2, 3 に示すフィッティングをおこない、Table 2 に示す現象時刻を得た。

Table 2. Result of diffraction fitting.

現象の時間差は、3.46秒である。カタログ値および予報より期待される現象の時間差Tdは、

Td= absolute( cos( Pm - Ps) ) * Se / Rv

(Pm : 現象の月縁における位置角; Ps : 主星に対する伴星の位置角; Se : 主星と伴星の離角;Rv : Relative Velocity , 恒星に対する月の相対角速度の、月縁と垂直な方向の成分) により計算できる。

Occult Ver 3.6による予報は、”109530 is double : 8.2 9.2 3.1" 299.9”　であり、これより、期待される減少の時間差は、3.71秒である。これは、観測より得られた値と比較的よく一致している。

Figure 2. Diffraction fitting for disappearance of component B.

Figure 3. Diffraction fitting for component A.

３．コンポーネントの等級

光量は月の明部の接近に伴い、僅かずつ増加している。この増加率はそれほど大きくないことから、現象前、ステップ、潜入後のそれぞれから、潜入に伴う変化の途中でないと考えられるフレームの平均値として、Table に示す値を得た。

これより、Table　に示す計算により、次の結果を得た。

等級差は0.98等級であり、主星の等級を8.2等級と仮定すると、伴星は9.18等級と計算され、カタログの数値(9.2等級)とよい一致を示す。