2009年9月10日と12月1日(UTC)の星食観測から得た
重星SAO76103のコンポーネントの位置と等級
2009.10.24
2010.1.11 改訂
宮下和久
English
Doublestar Report to IOTA coordinator
SAO76103の星食は、2009年9月10日に、東京の唐崎秀芳氏と滋賀の石田正行氏により観測がなされ、双方ともに小さな階段状の光量変化が観察された。
更に12月1日には、唐崎氏により2回目の観測がなされ、同様に小さな階段状の変化が認められた。これらの観測より、伴星の位置と等級が求められた。
ただし、重星によるものと考えられるステップが2フレームほどと小さいことから、より確実に確認するために、更なる観測が求められている。
Observation details
September 10, 2009 December 1, 2009
H. Karasaki M. Ishida H. Karasaki
Star Mag = 7.93 Star Mag = 7.93 Star Mag = 7.93
Event = R D Event = R D Event = D D
PA = 240.950 PA = 242.860 PA = 84.320
AA = 254.501 AA = 256.410 AA = 98.141
l = -4.430 l = -4.409 l = -4.309
b = -5.183 b = -5.175 b = -5.096
RV = 0.5282 RV = 0.5425 RV = 0.4098
CCT = -170.60 CCT = -172.30 CCT = -13.50
T1 = 54.75 T1 = 52.49 T1 = 50.20
T2-T1 = -0.05 T2-T1 = -0.07 T2-T1 = -0.07
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星食観測報告
Place name Nerima, Tokyo, Japan
Email address
Representative Hideyoshi Karasaki
TB CED 20 146 +13940xx.x +3544xx.x 84 xx M
TC CED 20 454 +1394001.2 +3544xx.x 84 xx M
OA H. Karasaki
20090910140854.70 X 4786 RD EG G0.02 1 W 222 BA
20090910140854.75 X 4786ARD EG G0.02 1 E 222 BA
20091201120750.27 X 4786 DD EG G0.04 1 W 31 CA
20091201120750.34 X 4786 DD EG G0.02 1 E 31 CA
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Place name Matusaka, Mie, Japan
Email address
Representative Masayuki Ishida
TA NED 16 100 +13628xx.x +3435xx.x 84 xx M
OA M. Ishida
20090910140652.41 S 76103 RD EG G0.04 1 W 11 AA
20090910140652.48 S 76103 RD EG G0.04 1 E 11 AA
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観測より得られた光量変化
i) 唐崎氏の観測 (2009年9月10日)
Karasaki-san (Mr. Hideyoshi Karasaki) observed xz4786, and he found a small step on the lightcurve.
As a result of my confirmation analysis, the 3D graoh at the intermediate value shows the appearance of a faint star,
and the diffraction simulation indicates that the event could not make gradual light change.
From this, it is thought that the step is generated by a double star which consists of two similar magnitude stars.
ii) 石田氏の観測(2009年9月10日)
石田正行氏もこの現象を観測し、ビデオをJCLOまでお送りくださった。バックグラウンドのノイズが多いことから、
半径4ピクセルという小さめの測光領域(Aperture)を用いて測光をおこなった。No.252フレームからNo.253フレームにかけて、
小さなステップが認められる。グラフ中に示した3Dグラフからも、この階段状の変化が恒星の光量変化を正確に表している
であると判断することができる。一方、恒星の月縁と垂直な方向の月との相対速度は0.5425秒角/秒と、比較的大きいことから、
このゆっくりした光量変化を回折の影響であるとして説明することはできない。唐崎氏の観測によるステップの高さとは異なる
ことが不思議であるが、いずれにせよ、近接した重星の現象であるというのが最も適した説明であろう。
iii) Karasaki's observation (Dec. 1, 2009)
唐崎氏は、12月1日に再度この恒星の星食を観測し、9月1日と同様の階段状の光量変化を得た。
唐崎氏より提供いただいたビデオについて、フレーム画像に対するガウスフィルターの適用をおこない、階段状の変化を確認した。
回折シミュレーションとの比較もおこない、回折では説明できないことも確認した。
コンポーネントの等級
i) 唐崎氏の観測 (2009年9月10日)
ii) 石田氏の観測 (2009年9月10日)
- Estimation of Magnitude of Doublestar Components -
Assuming magnitude of Pair is 7.93 Mag.
Estimated Magnitude
First Event : 9.49 +/- 0.13 Mag.
Second Event : 8.22 +/- 0.05 Mag.
- Measurement ---------------------------------------
Luminous Intensity derived from Limovie analysis
Average Stdv n
Combined : 1110.1 235.5 120
Step : 280.7 40.6 2
Background: 22.2 68.3 120
Noise Level (N/S)
Upper Lower
First event: 0.1570 0.2643
Second event:0.2839 0.0489
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iii) 唐崎氏の観測 (2009年12月1日)
コンポーネントの位置の解析(IOTAコーディネーターより)
[Jan. 10, 2010]
唐崎さんのSAO76103の観測報告をありがとうございます。
唐崎さんと石田さんによる9月10日の観測に加えて3個の観測が得られたことから、コンポーネントの位置関係を求めることが可能となりました。
OCCULT Ver.4 を使って
位置角 = 163.0±2.6° 離角 = 0.139±.026" です。
のように求められました。また、コンポーネントの等級は、唐崎さんの2回の観測はとてもよく一致しています。
9月10日の観測では 8.60+8.77等級 , 12月1日のの観測では 8.60+8.78等級 です。
Brian
IOTA coodinator's astrometry
[Sep. 14, 2009]
Hello,
S76103についての二つのレポートをありがとうございました。
二つの観測は、重星であることを示唆しています。ただ、ステップの高さが異なることが問題となってお、他の観測が望まれます。
二人の観測は、月縁上の位置角がほぼ同じであり、重星の位置角や離角を求めるには至っていません。
もしこの重星の離角を推定値である0.9秒角とするならば、現象の時間差は1.7秒となるはずです。
これから日本においては2回の観測の機会があります。2009年の12月1日と2010年の1月25日です。
また、2009年の11月4日にアメリカ合衆国の東北部で、2009年12月28日にヨーロッパで現象が見られます。
2010年も南半球に移って現象が続きますが、海上が主となるなど、観測条件はよくありません。
2011年になるとオーストラリアから観測できるようになり、それで今回の観測シーズンが終了します。
Brian