2010年2月21日(UTC)の星食観測から得られた
重星R501のコンポーネントの位置と等級

2010. 3. 12
宮下和久

English



R501 (66 Arietis, WDS BU 878) は、カタログに以下のように記載されている。
 XZ 4484 = SAO 75945 = ZC 501 = 66 Arietis
 RA =   3 28 26.5683   PM = 0.00000s
Dec =  22 48 14.430    PM = -0.1114"
 Mv = 6.20, Mb = 0.00, Mr = 0.00    Spectrum K0    Approx dia. .0000"

Star is component A in the following system
Name    Cmpt   Yr1  Yr2: PA1   PA2  :   Sep1   Sep2  :  Mag1  Mag2:     #1      #2  mean
BAG   2 Aa,Ab 1986 1989: 297.0   8.0:   0.000   0.200:  6.03  7.40: R   501  ------
BU  878 AB    1881 1991:  78.0  65.0:   1.100   0.800:  6.22 10.45: R   501  ------
BU  878 AC    1911 1997: 226.0 229.0: 151.300 145.800:  6.22 12.50: R   501  ------

WDS Discoverer codes
BAG  Balega, Y.Y. & Tikhonov, N.A.       
BU   Burnham, S.W.                       

2010年2月21日に起きたこの星の暗縁潜入は、5人の日本人観測者により観測がおこなわれた。 これらの観測から、コンポーネントA, B の位置関係と等級差が求められた。



IOTAの重星観測コーディネーターによるコンポーネントの位置関係の解析



重星観測コーディネーター Brian Loader 氏による伴星の位置の解析

求められた伴星の位置
Separation: 0.773+/-0.085", PA: 62.11+/-1.54deg

上記の解析では月縁の傾斜についての補正がなされている。解析結果は、観測間の整合がよいことを示している。
観測より得られた伴星の位置は、予報値 0.7" 62.7deg にたいへん近い値となっている。


コンポーネントの等級

                 K. Miyashita        M. Ida         M. Ishida          mean    
Brighter star:   6.23 +/- 0.01    6.24 +/- 0.01   6.25 +/- 0.01    6.24 +/- 0.01
Fainter star:   10.25 +/- 0.15   10.62 +/- 0.09  10.31 +/- 0.15   10.39 +/- 0.08

大野氏観測のビデオはわずかに飽和(サチレーション)している。 この設定は、暗い伴星を確実に検出でき、伴星の位置を正確に決めるのに有効であるが、伴星の等級を正確に求めることはできない。 そこで、伴星が検出されており、主星が飽和していない3個の観測により等級を求めた。
解析の結果、カタログ値に極めて近い値が得られた。

観測と光量変化の解析

i) 長野県安曇野市 (観測者: 宮下和久)




ii) 滋賀県東近江市 (観測者: 井田三良)




iii) 滋賀県守山市 (観測者: 石田正行)




iv) 岡山県倉敷市 (観測者: 大野智久)


The light change at the main star event well fit to simulated diffraction curve.


v) 岡山県総社市 (観測者: 監物邦男)



監物氏の観測では明瞭なステップは検出されていない。これは、用いられた口径が20cmと他の観測の25cm〜30cmよりも小さく、10等級の伴星を検出するためには光量が充分ではなかったためと考えられる。ゲインを上げれば伴星の検出に有利になるが、その分ノイズも増えて時刻誤差が大きくなる。どちらを優先するかは難しい問題である。