Ganymede の影による Io の食



光度の変化(ビデオのフレームのピクセル値)

現象を中心に前後合わせて11分間についてビデオのフレームごとのイオの星像のピクセル値の測定を行いました。
総フレーム数は19800。「AVIファイル光度連続観測ソフト"Limovie"」は、この測定を行うことを主な目的に作成されたものです。

58分頃に現象から外れた数値(0付近に連続しているもの等)がみられますが、これは、後に説明するように、観望会中のビデオ撮影のため、 参加者の方が、うっかり望遠鏡に触れてしまい、鏡筒がゆれてしまったことによるものです。
また、57分10秒付近にある僅かに飛び出した部分は、正分予告信号のLED光が明るすぎ、画面にノイズのようなざらつきが現れたことによります。

Limovie 測光用設定 :
    Aperture(Radius)=16 , Background(InnerRadius)=18 , Background(Outer)=24
    Aperture=877(Pixels) , Background=920(Pixels)
    StarTrackingMode : On (Radius=16)

光度の変化(Backgroundの面積が小さい時の測定値)

この図は、Limovie(0.9.5)の動作試験の時点での測定結果で、このサイトに最初に掲載したグラフです。
Limovie0.9.5には、バックグラウンドの半径に設定が反映されないときがある、というバグがありました。
上記の再測定したもの(Background=920(pixels))に対して、こちらはBackground=112(pixels)しかありません。
光量=Apertureの光量 − (Backgroundの1pixelあたりの光量 × ApertureのPixel数)
ですから、BackgroundのPixel数が小さいことは、統計誤差を増加させるだけでなく、ApertureのPixel数に比べて小さいと、その分拡大されてApertureの値に影響を及ぼします。この場合には、揺らぎが約8倍に拡大されていたことになります。
改良された測定値のグラフと比べて、特に減光が著しくなった時点で、バックグラウンドの揺らぎの影響が大きく現れていることがわかります。

Limovie 測光用設定 :
    Aperture(Radius)=16 , Background(InnerRadius)=18 , Background(Outer)=18
    Aperture=877(Pixels) , Background=112(Pixels)
    StarTrackingMode : On (Radius=16)

【撮影データ】
    赤道儀 EM200B
    光学系 D=128mm f=1040 Refractor
    接眼部 Er20mm による拡大撮影法(秒信号記録用暗視野照明装置にアイピースを取り付けた)
    保 時 GHS時計の分秒信号をCCD面に照射。
    ビデオカメラ Watec WAT100N
    VTR Sony DCR TRV10
    撮影時刻 2003年5月3日 20:50:40 ~ 21:05:30(JST) 測定にははそのうちの一部を用いた。
    シーイング シンチレーションで星像はゆれているが、薄雲等はない。透明度は中程度。

観測のようす


2003年5月3日に、条件の良い「木星の衛星の相互食」がありました。
Ganymede の影の中に Io が入り、その減光の度合いは95%におよぶ、と予報されており、楽しみにして準備を進めました。
この日は祝日で、天平の森では観望会の時間の最中に現象が起こります。観望会のお客さんに見ていただくのも大事な仕事です。 そこで、会場に望遠鏡とビデオ装置を設置し、大勢のお客さんといっしょにビデオカメラの画面を見ながらの観測となりました。
以下は、その時のようすを、掩蔽メーリングリストJOINに投稿したものです。

    長野県明科町の宮下です。
    私も5月3日のガリレオ衛星食を見ました。観測地は "いつもの" 森林体験交流センター天平の森。
    同館が開催する観望会の日に当たっていましたので、駐車場にセットした望遠鏡にビデオを取り付け、観望会のお客さんたちといっしょにモニターを見つめていました。
    最初は、「何となく暗いような気がするな」という感じでしたが、そのうちにどんどん暗くなり、光度が元にもどるまでの間、皆、歓声を上げながらモニター画面に見入っていました。
    小学校6年生くらいの子から、「この観測で、どんなことがわかるんですか?」
    また、年輩の方からは、「これは、日食や月食のようなものなんですね?」という質問をいただきましたので、天文雑誌に書かれていたことをそのまま受け売りで説明しました。熱心に聞いて下さり、満足してくださったようです。
    いつも思うのですが、観望会で食現象を見ていただく、というのはいいですね。目で見て変化がはっきりわかるだけでなく、天体が動いていることを実感できるのが、見て下さる方にとってとても楽しいことであるようです。
    さて、ビデオの記録ですが、感度を高めに設定しておいたので、最も暗くなった状態でも何とか存在がわかる状態ではあるようです。後日、時間のあるときに光度を測定してみたいと思います。
    実は、復光の途中、一人のお客さんが誤って三脚に触れてしまい、一度、画面が大きく揺れてしまったのですが、「もう少し離れて見よう」と、誰がいうともなく声がでて、それでかえってモニターを覗くみんなの一体感が高まりました。
    というわけで、揺れなんか気にしない気にしない...


減光のようす


 

ビデオのスナップショット

減光前
20:54:00.00(JST)
減光中
20:55:00.00(JST)
最も暗くなった状態
20:56:30.00(JST)
復光中
20:58:00.00(JST)
復光
21:01:00.00(JST)