星食観測ビデオ


星食観測の多くはビデオ観測によりおこなわれています。
ここでは、星食観測日本地域コーディネーターにお寄せいただいた観測のいくつかをご紹介します。

1. 重星



2007年11月23日 SAO93062の星食   観測者 宮下和久 (長野県安曇野市)

9h05m14s(UTC)に、画面中央付近に見える恒星(SAO93062 = XZ3617 = ZC399 = Mu Arietis)が月により隠されます。
目で見ただけでは瞬間的な減光のように見えますが、40ミリ秒(ビデオにして1.5フレーム)の短いステップを持った減光です。
光量変化の解析結果は  こちら (英文)


2. 接食

通常の星食は、月の一方の縁に恒星が隠れ、反対側の縁から現れます。 これに対して、恒星が月の縁をかすめて通り過ぎることを「接食(Grazing)」と呼びます。 このときには、恒星が1回だけではなく複数回消えたり現れたりする現象が見られます。

月の表面にはクレーターなどの地形があり、地球から見た月の縁は図のように凹凸しています。 この図で、上が天の北極の方向だとすると、月は青い矢印のように天球上を西から東へ向かって1秒間に約0.5秒角の速さで移動します。 月の山が次々に星を隠しながら通り過ぎることから、観測者からは星が消えたり現れたりするように見えます。



2010年12月26日 X16554の接食   観測者 鈴木寿 (静岡県浜松市)

左の画像の矢印の先が 恒星X16554 です。画面上のこの星を見つめていてください。
潜入(Disappearance)と出現(Appearance)が4回繰り返されています。(星食観測では、4D4Rと呼びます。)
ピッ、ピッと鳴っている時報音は、GPSの1ppsに同期しており、1ミリ秒の精度を持つ正確な時刻信号です。 このビデオの場合、03h23m00s の時報の直後に恒星の出現がありますので、それを目安にすると見やすいと思います。 このとき、月を基準にして見つめていると、恒星が少し違ったところから現れたように見えますが、 これは、月が恒星に対してゆっくり移動しているためです。

画面に表示されている時刻(JST, 日本標準時)も、GPSの信号に同期しています。

光量変化の解析結果

上記のページの図2が、このビデオを解析した結果から得られた光量変化です。 光の回折のために、星が一瞬ではなく、何フレームかに渡って徐々に減光(増光)したようすがとらえられています。