星食観測によるSAO75671のコンポーネントの確認

宮下和久

2007/12/1

訂正・改訂 2007/12/2


1.はじめに

東京都練馬区の唐崎秀芳氏は、20071123の重星SAO75671(=WDS BU525) の星食のビデオをお送りくださった。

唐崎氏によると、「明確な二重星の減光を確認しました。」とのことである。ビデオは、「フレーム蓄積無し」、「ガンマ=1.0」と、重星の観測を行うのに都合のよい撮影条件である。しかし、図1(唐崎氏によるキャプチャ画像)に見られるように現象が月の輝面に近くで起こっており、測定においてはグラジエーション状の変化を持つ明るい背景の影響が大きいと考えられる。そこで、GSC6364:280の星食のビデオに用いて効果が高かった、「長方形状のバックグラウンド領域」を用いて解析をおこなった(Figure.1)。

その結果、

最初の減光 : 03h45m06.50s +/- 0.01s

2回目の減光: 03h45m07.48s +/- 0.01s

コンポーネントの等級合成等級が6.8等級であるとすると、主星が7.45等、伴星が7.67等級

月縁での現象の位置角における、主星と伴星の角距離: 0.484秒角

を得た。


Figure 1. SAO occultation in Nov.23 2007

Analyzing was used rectangle BKG area to remove the influence of background brighten by sunlit lunar face.



Figure 2. Shape of background area for event near sunlit face.

背景の光量分布が、ApertureBackgroundの各領域に同じように影響するように工夫した。


2. SAO93062の重星についてのカタログの記載


Table 1. Feature of SAO75671 described in Washington Double Star Catalog

Name

Observation

Position angle

Separation

Magnitude

Spectrum type



First

Last

First

Last

First

Last

Pri

Sec

BU 525

1877

2005

105

90

0.6

0.6

7.47

7.45

A3



Table 1. Feature of SAO75671 described in XZ Double Star File

Name

Observation

Position angle

Separation

Magnitude

Spectrum type



First

Last

First

Last

First

Last

First

Last

BU 525

1877

1999

105.0

265.0

0.600

0.500

7.38

7.62

A3




3.Limovieによる解析および回折シミュレーションとの比較


 Limovieの解析については、バックグラウンド領域の形状としてLinar Limb/Meteorを用い、Gap0に、WidthAperture径と同じサイズに設定することにより、月の明部によるバックグラウンドへの影響を除くようにした。得られたグラフは、星の潜入後の値がゼロに近い値になっており、これらの機能が有効に働いたことを示している。 参照

回折シミュレーションとして、月までの距離 (D)は、LOW(Lunar Occultatin Workbench) Ver4の予報による 354785kmを用いた。 また、月の影の速度は、OCCULT Ver.4 より得た RV(relatice velocity) 0.494 arcsec/second cct(contact angle)=-31degree、および上記の月までの距離(D)を用いて、次式より、991m/sec を得た。

Vs=RV*D/cos(cct) .


フィッティングは、コンタクトアングルとして予報値の31度を用いておこなった。結果を、Figure 2,3,4に示す。

2回目の減光時に値が上下に変化し、現象時刻が明確でない。Half Flux Diameterの値を見ると、No.141フレームで、10pixel 以上の高い値になり、ばらつきが大きくなっている。このことは、No.140フレームまでは星像が存在し、No.141フレーム以降は星像が存在しないことを示している。

光量の測定値をTable 2.に示す。現象時刻の誤差Eは、フィッティングの結果による他に、この値を用いて求めることができ、以下の式により得られる。

E = L * N / S

ここで、Lはフレームまたはフィールドの露出時間。 Sは信号の強度であり、減光時の落差として得られる。 Nはノイズで、現象の前後どちらかの大きい方の標準偏差で得られる。結果は、最初の減光、二回目の減光ともに0.007秒であった。これらは、Limovieによるフィッティングの結果とほぼ同じである。


Table 2. Luminous intensity


Frame from

to

Intensity

Stdev.

Full bright

81

106

601.1

119.8

Step

116

137

306.3

97.2

Background

147

173

63.7

80.8


以上から、次の現象時刻を得た。


最初の減光 : 03h45m06.50s +/- 0.01s

2回目の減光: 03h45m07.48s +/- 0.01s

現象の時間差: 0.98sec


月縁における現象の位置角(93)方向の離角の成分Seは次の式で計算できる。

Se=Dt*RV

ここで、Dt 現象の時間差(sec); RV relative velocityである。

観測結果から、Se=0.484 arcsec が得られた。

また、コンポーネントの等級は、合成等級が6.8等級であるとすると、主星が7.45等、伴星が7.67等級である。

重星の等級は、星食予報・解析ソフト OCCULT V.4  の、Ephemerides - Magnitude calculator を用いると簡単に計算することができる。



Figure 2. Luminous change obtained from Limovie analysis



Figure 3. Fitting to diffraction simulation (first event)

Exposure beginning at 03h45m06.49s completed at 03h45m06.51s therefore frame central time is 03h45m06.50s. Hence event central time is 03h45m06.50s.



Figure 4. Fitting to diffraction simulation (second event)

Exposure beginning at 03h45m07.47s completed at 03h45m07.49s therefore frame central time is 03h45m06.48s. Hence event central time is 03h45m07.48s.



Figure 5. Half Flux Diameter

The HFD plot shows that the star disappeared at No.141 frame