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KIWI-OSDタイムスタンプの詳細

A detailed look at KIWI OSD video timestamps

Geoff Hitchcox



以下は、ビデオタイムインサータ KIWI OSD の開発者 Geoff Hitchkox 氏のページ

http://homepages.slingshot.co.nz/~geoff36/vsync.htm

を同氏の許可を得て日本語に翻訳したものです。星食観測などのビデオを用いた時刻測定についてより詳しく理解することができます。

2007/12/30 宮下和久



このページの目的は、最近の精密なビデオの時刻計測の実験から得られた結果を示すことです。この文書は、ビデオタイムインサータを持っていて、何が実際に測定されているのか、そして時刻測定の観点からカメラがどのように動作しているのかを知りたいと思っている人々のために書かれました。


[KIWI OSD Timing]左の図は、Dave GaultKIWI OSDを用いて観測した、恒星の月からの出現を写したビデオです。これを例として考えてみましょう。
KIWI OSD
は、ビデオカメラが発生した垂直同期信号(Vsync)パルスの時刻を表示します。ビデオのスクリーンから、最初のVsync17:54:02.528で、次のVsync17:54:02.525であることが読み取れます。Vsyncの間隔はNTSC(EIA)カメラを意味する0.17秒です。これはGPSタイマーが同期し時刻を書き込み始めてから15,078フィールド目に当たります。問題は、この表示された時刻が、光学的な露出とどのように関係しているのか、です。


訳者註: 

上の画像でのKIWI OSDの画面は、左より、

[時分秒] [奇数フィールドの開始時刻][奇数フィールドの終了時刻][同期後のフィールド数]

を示している。 これは先行する奇数フィールドについて示したものであり、偶数フィールドの場合は、

[時分秒] [偶数フィールドの終了時刻][偶数フィールドの開始時刻][同期後のフィールド数]

と表示される。

ビデオの1画面(1フレーム)は、2つのフィールドが合成されることから、左から2番目の領域は、

[奇数フィールドの開始時刻] と [偶数フィールドの終了時刻] が重なって(だぶって)見えることになる。この重なりを避けるには、LiMovieField Show機能を用いて上下に分けて表示すればよい。

なお、左から3番目の表示は、[奇数フィールドの終了時刻] = [偶数フィールドの開始時刻] であり同じ数字を表示していることから、重なりは発生しない。また、この表示は、フレームの露出中央時刻を表している。


私は最近まで、光学的露出が完全に上記の2つの時刻表示に一致しているものと理解していました。

しかし、私たちは、Gerhard Dangl(Austria)が開発したすばらしい装置VEXA("Video EXposure Analyser")の助けを借りて、光学的露出は完全にVsync信号に一致しているわけでないことを見つけました。と言っても、皆さんはKIWI-OSDを用いて行った観測結果が不正確であると考えてパニックに陥る必要はありません。Vsyncと露出期間(exposure window)の差は、1ミリ秒以下であり、1フィールドの露出時間(16ミリ秒)に比べるととても小さい値です。皆さんは、2つの時刻表示は、そのままフィールドの露出開始と終了の時刻を表すこととして取り扱ってかまいません。

しかしながら、VEXA(とてもエキサイティングですばらしい設計の、でも、皆さん全員に必要であるわけではない装置)は、カメラのタイミングの詳細を理解するのに役立ちます。Gerhardが間もなく作るであろうVEXA掲示板で、私たちはよく使われている他のカメラについてのまとめをすることを望んでいます。そうすれば皆さんは、自分でVEXAを使わなくても、彼らのビデオカメラは時刻についてどのように動作するかを知ることができます。

それにはまだ時期尚早ですが、今までのところ、私たちはVEXAを用いて3つの重要な特徴を見出すことができました。


1. Vsyncと光学的露出の終わりの時間差

2. 短時間シャッターがはたらいたときの(明るいシーンの場合)露出開始と終了の時刻

3. 光のレベルの変化による露出の履歴効果−PC164のように自動露出モードのみを搭載するカメラについて


以下では、上記の最初の2つをPC164カメラについて議論したいと思います。


Delta between Vsync and end of optical exposure

-Vsyncと光学的露出の終わりの時間差-


最近、 Walt Morgan(California USA) は、Digital Video (DV)を使って、ビデオタイミングとWWV音声の遅延について、とても興味深い実験をまとめました。彼の実験の一つにおいて、WaltNTSCビデオが1秒間に60フィールドより僅かに遅いことを利用しました。Waltは彼のPC164 EIA(NTSC)カメラでKIWI OSDの秒信号(1PPS)nLEDフラッシュを撮影しました。

(なぜフレームレートが59.94/secなのかに関する説明は、ここをクリック すると見ることができます。)

LEDフラッシュのスタートは、1秒間に1ミリ秒の割合でビデオフィールドの中を移動(drift)していきます。そのため、およそ17秒でLEDフラッシュはフィールドの終端から開始点に向かって移動していきます。正しいフィールドを選ぶことにより、あなたはビデオタイムインサータが1ミリ秒の精度で正しく時刻を記録しているのを見ることができます。残念なことに、PALシステムではこのような使い方はできません。Waltは次のようなLiMovieの画像(輝度を反転してあります)を私に送ってくれました。WaltNo.142635フィールドが終了時刻が0.999秒であるにもかかわらずLEDが点灯(黒い染みのような部分)しているのか、不思議に思いました。

彼は、KIWI OSDのタイムスタンプは1ミリ秒の遅れがあるのではないかと考えました。もしGerhardVEXAによる実験がなかったら、私は、Waltの画像を見て当惑したでしょう。何しろ、カメラが垂直同期信号のパルスよりも後に露出を続けていることを示しているのですから。 

Dave Gault(オーストラリア)PC164VEXAで測定しました。そして、カメラは、垂直同期信号(パルス)開始時刻より約550μ秒後まで、露出を続けていることを見出しました。私はそれで、なぜLEDフラッシュが999ミリ秒を示すビデオフィールドに記録されるのかについての説明を与えることができました。(この説明はWaltの実験結果について説明することができます。)


[Walt Morgan's Early Flash image]

[Explanation of Walt's Early Flash]


まずはじめに、私たちは垂直信号と光学的露出の関係について見ることができます。

このミリ単位のオフセット(垂直同期信号と光学的露出の間の)はたいていのビデオによる時刻測定には大きな影響を与えません。しかしながら、私が考えるところでは、これは時刻記録(タイムスタンプ)と光学的露出の間の関係を理解するうえで重要なことです。

PALカメラにおいて、Gerhardと私は垂直同期信号と光学的露出終了の間隔はおよそ780μ秒であることを測定から確かめました。



Which end of a field, is a short exposure taken at?

シャッター機能がはたらいて短い露出となった場合の時刻−


これはKIWI OSDを使った画像の中で、私の好きなものの一つです。ここには国際宇宙ステーション(ISS)が月の神酒の海の前を"飛行"しているのが写っています。

[ISS at edge of Mare Nectaris]


私たちはこの画像から、露出時間は1ミリ秒以下であることを知ることができます。なぜなら、ISSブレずに写っているからです。しかしながら、このビデオから正確な露出時刻は求められるのでしょうか?

Ed Morana VEXAを使って彼のWatec 902H CCDビデオカメラをテストしました。そして、高い輝度では(PC164のような)カメラはビデオフィールドの終端を記録していることを見出しました。このことから、私たちは精度よく上記の現象の時刻を求めることができます。

07:47:04.633 UTC +/- 1 millisecond


私はPC164とは操作性の全く異なるPAL CMOSカラーカメラを持っています。VEXAを使って私は、光のレベルを上げていくと、カメラ(センサー:OV7910)は、両方の端から露出を「切りつめ」はじめます。(この表現を使えば、PC164カメラは露出を開始点から「切りつめ」はじめることになります。)したがって、メーカーによってカメラの露出の時間的位置が異なっていることになります。


更にGerhardにより、自動露出がどのように働くか、また、明るいシーンのときに、ビデオのフィールドのどの部分(時間)が露出されるのか、について、 VEXA を用いたテストがなされました。

私はこのページがビデオを用いた時刻測定の一助になればと願っています。VEXAのような機器を用いて革新的な実験を行うことで、ビデオタイミングの科学について更に深く学ぶことができるのです。


このページを記述するにあたり、次の方感謝いたします。

Gerhard Dangl (Austria) (VEXAの開発)

Dave Gault (Australia)

Ed Morana (USA)

Walt Morgan (USA)


KIWI OSD Homepage:
Regards, Kiwi Geoff


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